君と歩く未来を35すべてが愛しくて翔side〜

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すべてが愛しくて翔side〜

海外勤務が始まると途端に忙しくなり日本に残して来た人たちの事を忘れそうだった。

それでも、楓とカズの事は常に頭の片隅にあった。

空港に着くとすぐに無事に着いたと連絡したきり。その後連絡はしていない。

どうしているだろうか。

ほとんどはオフィスとマンションの往復で自分の時間と言えば夜になってマンションのベランダから夜空を眺めるくらいか。

楓たちが起きている時間に眠り、楓たちが寝ている時間に仕事をする。

夜空を眺めていると今頃何してるだろうか?

楓を思う。

やっぱり気持ちを伝えれば良かった。

今更、後悔が襲う。

あの時、言えば良かった。

仕事しながらも時後悔の念に駆られる。

カズはどうしただろうか。

楓に気持ちを伝えたかもしれない。

そしたら、二人は?

モヤモヤと考える自分が、もどかしくて仕方なかった。

夜になるとやっぱり寂しい。

仕事仲間と飲みに出たり食事に行ったりもした。

それなりに楽しかったし仕事だってやりがいがあった。

でも。

なぁ、櫻井は彼女いないの?

えっ?

アメリカ人は唐突に聞いてくる。

いや、いない。今は仕事が恋人。

はは、それ本気で言ってるの?

あー、ジョークだよ(笑)

アメリカのプロジェクトチームと仕事をしていると時聞かれる。

恋人はいないのか、と。

そもそも、楓が恋人だったら日本からここまで連れて来る勇気はあっただろうか。

何年も帰れないんだ。

日本で待たせるのも何だか嫌だし。

一緒に連れて来たとして、楓だって仕事を辞めてもらわないといけない。

いつ日本に帰れるか分からないのに連れて来てもいいのか。

やっぱり告白しなくて良かったんだ。

急にそう思ってホッとしたり。

楓。

俺はずっと好きだったんだ。

君が初めて高校へ入ってきた時、初めて話しをした時。

花火大会へ浴衣で来た時。

泣きながら過去を話してくれた時。

時、ふっと、見せる切ない表情も。

笑った時に出る小さなえくぼも。

カズとふざけあって怒ってる時も。

すべてが愛しくて。

ずっとずっと俺のものになればいいのにってそんなふうに思って来たんだ。

やっぱり。

次の長期休暇は日本に帰ろう、そう思った。

ほんの僅かな時間でも二人に会いたい。

楓に会いたい。

続く